代表挨拶

こんにちは。仮り暮らし代表の徳永です。

長文ですが、修正を重ねながら代表挨拶として自分の気持ちを文章に起こしました。
最後までご覧いただけますと幸いです。

私は現在は普通の会社員ですが、高校生の頃から子どもにかかわる仕事がしたいと思っていたので、保育系の短大を出ました。子どもを取り巻く環境には人よりも興味を持っています

ただ、昨今耳にする「家出した少女が事件に巻き込まれた」というニュースについては、世の中の大多数の人が思うことと同じことを思ってました。「へぇそうなんだ、かわいそう」「自分から行ったのなら自業自得じゃん」などです。

とはいえやはり子どもに関わることですから、なぜか他人事には思えなくて、どうしたらこういう事件が減るのかなと漠然と思ってはいました。結局、自分から何かをしようとは微塵も思いませんでしたが。

実は、かつての私は将来のことを「このまま普通に会社員をして普通に定年を迎えて、あぁもしかしたら結婚とかするのかな、老後は東南アジアでのんびり年金暮らしもいいなぁ」とか考えていたのです。

しかしながら、2015年11月、それまでの考えが変わる出来事が起こります。

仮り暮らしを立ち上げようと思ったきっかけ

私には2歳下の妹「A」がいますが、Aが姉妹喧嘩をきっかけに蒸発したのです。

母が警察に届けるも、「成人なので積極的な捜索はしない。パトロール中に発見しても、本人が居場所を告げることを拒んだ場合、個人情報保護のため親御さんであっても居場所を伝えることができない」と言われました。

私の考えは、成人した人間が自ら考え望んで実行したことは第三者の意見は聞き入れられないものだから心配いらない、いずれ結果が分かるというものです。

ところが、母は気持ちを整理することができませんでした。

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「個人情報」って、親子なのに・・・とショックを受けた母、それからは探偵を雇うか、いやいや費用が、の繰り返しで結局雇うに至らず、ついには「Aが夢に出てきた。夢でこれこれをしていた、どういうメッセージなのか。生きているのかすらも分からない、心配で仕方がない。どうしてあなたは平気なの」などと話すようになりました。

私としては喧嘩別れでしたから、「なぜ自分勝手に蒸発した成人の行方を、こんなに長いこと気にし続けるのか」と、正直なところうんざりしてました。

が、母の話を聞く回数が増えるにつれて、こう考えるようになりました。

「全国の家出児童の親御さんの中には、母と同じような思いをしている方もいるのではないか」

「家出児童を保護できる公的施設を立ち上げることで、親御さんの不安感を少しでも軽くすることができるのではないか」 と。

以上が、仮り暮らしを立ち上げようと思ったきっかけです。

家出児童の気持ちを受け入れたい

この活動を始めたとして、はたして需要はあるのか?と考えたとき、ふと気づきました。

虐待を受けている、ネグレクト(育児放棄)を受けている、といった「家にいると危機的状況にさらされる」子どもたちを保護する場所はたくさんあります。

しかし、「親と喧嘩した」「家族とウマが合わない」 「家にいたくない」というのが理由の場合は、受け入れてくれる施設がほとんど無いのです。

2018年現在、スマートフォンや高性能ポータブルゲーム機が市民権を獲得し、もはや持ってない方が少数派です。コンビニや駅、カフェといった場所で、誰もが簡単に行ける場所で無料でいつでもインターネットにアクセスすることができます

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そして彼女たちは検索します。「家出したい」「▲▲区 家出」「家出 支援」「家出 サポート」などの検索ワードを用いて。

そして彼女たちは、検索結果の1ページ目に出てくる犯罪予備軍からの撒き餌を目にするのです。「困っている女の子、泊めてあげます」「家出少女は駅を探そう」「XX町のオトナの出会い」という文字を。

そしていずれは「身体さえ差し出せば逃げられる」「ここの男の人は私を大事にしてくれる」「あわよくばお小遣いも稼げる」と考えるのです。自暴自棄になった子どもの思考回路は怖いですよ

徳永が以前出会った女の子は、「男の人にレイプされてでもその人の世話になる方が、家にいるよりずっとマシだ」と言い切りました。嘘かホントかは今でも分かりませんが、少なくともそう言い切れるほどには、家族関係に悩んでいたのです。

ちなみに、私自身、プライバシーも理解も逃げ場も無い子ども時代でした。

生まれ育った家に「自分の部屋」が無く、自分宛の郵便物はことごとく開封され、机の引き出しの中身は通学中に配置が変わる、妹と漫画を取り合えば「お姉ちゃんでしょ」、手伝いたくなくても「お姉ちゃんでしょ」、喧嘩をすれば「お姉ちゃんでしょ」と言われ続ける、プライバシーが無いと言えば母親曰く「親子にそんなもんいらない!」。父親は男親だからなのか関与したがらず…。

だからこそ、私は「家にいたくない」「家出したい」という気持ちに共感できるのです。だからこそ、彼女たちが被害に遭う前に助けたいのです。

職に就けない人たちを応援したい

*ここでは、職 = 正社員職としてお話します。

私は保育系短大の出ですから、児童福祉施設についても勉強しました。するとそこには、「保護できるのは原則18歳まで。それ以降は退所させる」というルールがあったのです。

いやいや18歳までって。つい先日高校を卒業した子に、卒業おめでとう!これからは自立だね、とか。当人からしたら、一人暮らしができるというわくわく感があるかもしれませんが、それよりも不安の方が大きいと思います。

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しかし施設としても、本音はこんなことしたくないのです。 今の日本には施設が足りておらず資金も無く満足な保護ができないため、やむを得ずこのような待遇になっているのです。

そのため施設を18歳で退所した若者の多くは、進学ではなく働く方を選ぶケースが多いのです。もちろん中には奨学金などを利用して進学するケースもありますが。

そして、学歴不問の求人が増えているとはいえまだまだ学歴社会の日本です。表向き「学歴不問」としていても、実質それを気にしている企業は多くあります。

そのため若者は低収入な仕事に就かざるをえず、毎日の生活だけで精一杯となり思うような就職活動ができないという悪循環に陥りがちです。

そこで私は、「職員として彼らを雇い、資格やスキル獲得の援助をし、自立に向けてサポートするのはどうか」と考えました。

居場所が無い人たちの拠り所を作りたい

当初は児童保護施設を巣立った若者を受け入れようという思いだけでしたが、徐々に「居場所が無い」のは大人にも当てはまるのでは、と考えるようになりました。「孤独」「中学生が自殺 いじめか」という文字が目に付くからです。

リストラされた、会社を辞めたが転職に失敗した、仕事が上手くいかない、人間関係が上手くいかない、そもそも身を置ける場所が無い、などなど、背景はその人の分だけあります。

そのような方々は、常に「明日の不安」を抱えます。「収入が無い = いつかは家を追い出される」「この生活から抜け出せないんじゃないか」「もういっそ、地球が滅べばいい。明日なんぞ来なくていい」と。

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そして私自身、子ども時分は人見知りが激しくて教室に居場所がなく、よくある「何人組になってね」が最大の恐怖、そのままこじらせ短大卒業までぼっちで、家庭環境もあわさって、常々「居場所が無い」「消えたい」と感じていました。

人間、不安があると余裕を失い、思考できなくなり、こうなったのは自分が至らないからだと自責し、やがて自滅に向かってしまうものです。

そこで、そういった方々を雇用したり受け入れたりして、ひとまずの居場所を作ってはどうかと考えました。

そうやって過ごしながら自己肯定感を取り戻すことで、その人の何かが変わるかもしれない。それをサポートできるようになりたい。そうしていつか、前を向いて歩けるようになってほしい。そう願っています。

ご一読いただきありがとうございました。